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在宅の服薬管理の支援 ― 飲み忘れ・残薬・ポリファーマシーへの関わり方
在宅での服薬支援で訪問看護師に期待されるのは、薬を「きちんと飲んでもらう」ことだけではありません。飲めているか、飲めない理由は何か、薬の影響が暮らしに出ていないかを観察し、医師や薬剤師に伝えることです。厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」も、看護師の役割を、服用管理能力の把握、服薬状況の確認、服薬支援、薬物有害事象の確認などと整理しています。
なぜ在宅で服薬支援が大切なのか
高齢になるほど薬が増えやすい
指針の各論編 (2019年) では、全国の保険薬局の処方調査で、65〜74歳の3割、75歳以上の4割に5種類以上の薬が処方されていたことが紹介されています。薬剤師が訪問している在宅療養の患者では、内服薬の種類が中央値で7種類だったという報告もあげられています。
また、一般病院の外来で慢性疾患の治療を受けている65歳以上の患者では、市販薬やサプリメントを定期的に使っている人が約3分の1いて、そのことを医師に伝えていたのは約30%にとどまったという報告も紹介されています。
ポリファーマシーとは
指針では、ポリファーマシーを「単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連した薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態」としています。何剤からポリファーマシーとするかについて、厳密な定義はないとされています。
ポリファーマシーが生まれる典型的な例として、総論編では次の2つがあげられています。
- 新しい症状が出るたびに別の医療機関や診療科にかかり、薬が積み重なる
- 薬の有害事象に、さらに薬で対処し続ける「処方カスケード」
指針が示す看護師の役割
各論編では、在宅などの療養環境では、服薬支援や情報共有で看護師やほかの職種の関わりも重要だとして、職種ごとの役割を表にしています。その一部です。
| 職種 | 役割 |
|---|---|
| 看護師 | 服用管理能力の把握、服薬状況の確認、服薬支援。ADLの変化の確認、薬物療法の効果や薬物有害事象の確認、多職種への情報提供とケアの調整 |
| 介護福祉士 | 服薬状況や生活状況の変化の確認 |
| 言語聴覚士 | 嚥下機能を評価し、内服可能な剤形や服用方法の提案 |
| 介護支援専門員 | 各職種からの情報を集め、主治医・歯科医師・薬剤師へ伝える。処方の変更内容を地域の多職種と共有 |
処方の確認・見直しは医師・歯科医師・薬剤師が中心になります。訪問看護師は、暮らしの場で見えることを、判断する人に届ける役割です。
飲み忘れ・残薬への関わり方
残薬は「理由」を聞く
指針では、残薬が多い場合は、処方日数の調整だけでなく、残薬が出る理由を聞き出し、服薬の環境に合わせて服用回数を調整する必要もあるとしています。飲み込みにくい、手先が動かしにくい、飲むタイミングと生活リズムが合わない、効果を感じず自分でやめている、など、理由はさまざまです。訪問看護師は、その理由を聞き取って医師や薬剤師に伝えることができます。
認知症の方の場合
認知症の高齢者では、服用状況を自分で管理できない可能性が高いため、服薬を補助する人を決めて、残薬と空の包装の確認を習慣にするなどの方法で、在宅で管理できる期間を延ばせるとされています。補助する人による管理が難しい場合は、服薬カレンダーに薬をセットするなどの方法で、飲めているかを確かめることが望ましいとしています。早めに家族などの手も借りて、習慣にしていくことも勧められています。
アドヒアランスという考え方
指針では、アドヒアランスを「患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って服薬すること」と説明しています。本人が薬について納得しているかどうかも、飲み続けられるかに関わります。
薬の影響に気づく
各論編では、高齢者は薬物有害事象によって、ふらつき、転倒、食欲低下、便秘、抑うつ、認知機能低下といった老年症候群が生じることがあるとしています。また、高齢者の薬物有害事象はわかりにくいこともあるため、出てきたあらゆる症状と薬との関連を考えることが求められています。
「最近ふらつく」「食欲が落ちた」といった変化を、年齢や病気のせいと決めつけず、薬が変わった時期と照らして主治医や薬剤師に伝えることは、訪問看護師ならではの役割です。薬を減らす・やめるといった判断は、医師・薬剤師に委ねます。
薬剤師との連携 ― 居宅療養管理指導
介護保険では、病院・診療所・薬局の医師、歯科医師、薬剤師などが、自宅で療養している要介護者に療養上の管理と指導を行うサービスを「居宅療養管理指導」と定めています (介護保険法第8条第6項)。薬局の薬剤師が行う場合は、医師または歯科医師の指示にもとづいて薬剤師が策定した薬学的管理指導計画にそって行うことが、運営の基準で定められています。
指針では、地域の多職種が連携する方法として、異なる職種が同時に自宅を訪問すること、電話やFAXでの相談、情報共有ツールの活用、サービス担当者会議への参加などがあげられています。担当の薬剤師が訪問しているかを確かめ、気づいたことを共有しあえる関係をつくっておくと、支援がぐっとしやすくなります。
お薬手帳を活用する
指針は、療養の場を問わず、お薬手帳を活用した医師・歯科医師・薬剤師などの連携を勧めています。処方薬だけでなく市販薬などの使用状況を把握することや、病名、血圧などの所見、検査値、処方変更の理由なども適宜書き込むことが望ましいとしています。
一方で、お薬手帳に全ての薬が載っているとは限らないため、情報が足りない可能性を念頭に、関係する医療スタッフと連携して補う姿勢も必要だとされています。在宅では、市販薬の使用は本人などが申告しないと確認しにくいため、本人やご家族、介護スタッフからよく聞き取ることが大切です。
よくある質問
看護師が薬を減らす判断をすることはありますか?
ありません。処方の確認と見直しは医師・歯科医師・薬剤師が中心になって行います。訪問看護師は、服薬の状況や暮らしの変化を伝えて、その判断を支えます。
何種類からがポリファーマシーですか?
指針では、何剤からポリファーマシーとするかについて厳密な定義はないとされています。数だけでなく、薬に関連した有害事象や飲み間違い、飲みにくさなどの問題が起きていないかを見ます。
市販薬やサプリメントも確認したほうがいいですか?
はい。指針では、処方薬に加えて市販薬などの使用状況を把握することが重要だとされています。在宅では本人の申告がないとわかりにくいので、ご家族や介護スタッフからも聞き取ります。
残薬が見つかったら、どうしますか?
自己判断で処分や調整をせず、残薬が出た理由を本人やご家族から聞き取り、主治医や薬剤師に伝えて相談します。
まとめ
在宅の服薬支援は、薬の知識に加えて、暮らしを見る目と、多職種につなぐ力が生きる仕事です。病棟で培った薬の観察の経験は、訪問看護でもそのまま役に立ちます。訪問看護でのチームの連携について聞いてみたい方は、話を聞くだけのカジュアル面談をご利用ください。

