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精神科訪問看護とは ― 仕事内容と、担当するのに必要な経験・研修
精神科訪問看護は、精神疾患のある方が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、ご自宅を訪ねて生活リズムや服薬、人との関わりを支える訪問看護です。医療保険で精神科訪問看護を行う看護師には、精神科での1年以上の勤務経験や、20時間以上の専門研修の修了などの要件があり、ステーションは事前に届出をします。ここでは、仕事の中身と要件、キャリアとして考えるときのポイントを整理します。
精神科訪問看護が求められている背景
国は2004年 (平成16年) の「精神保健医療福祉の改革ビジョン」で、「入院医療中心から地域生活中心へ」という方針を打ち出しました。2017年 (平成29年) からは、精神障害の有無や程度にかかわらず誰もが地域で安心して暮らせるよう、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築が進められています。
厚生労働省によると、精神疾患を有する外来患者の数は令和5年で約576.4万人にのぼります。退院して地域で暮らす方、通院を続けながら生活する方を、ご自宅で支える役割として精神科訪問看護があります。
どんな支援をするのか
精神科訪問看護の中心は、処置よりも「暮らしを続けるための関わり」です。国が定める研修の内容から、仕事の輪郭が見えてきます。
- アセスメント: 表情や話し方、睡眠、食事、部屋の様子などから、その方の状態をつかむ
- 病状悪化の早期発見: いつもとちがうサインに気づき、主治医と早めに共有する
- 薬物療法に関する援助: 薬を続けられているか、飲みにくさや副作用の訴えがないかを一緒に確かめる
- 医療継続の支援: 通院や治療が途切れないよう支える
- 信頼関係の構築・対人関係の援助: 安心して話せる関係をつくり、人との関わり方を一緒に考える
- 日常生活の援助: 買い物、金銭管理、家事など、生活の困りごとを整理する
- 多職種との連携: 主治医、相談支援専門員、行政の窓口などと情報を共有する
ご家族の相談に乗ることも大切な仕事です。本人とご家族、それぞれの思いを聞きながら、無理のない暮らし方を探していきます。
訪問で心がけたいこと
精神科訪問看護では、関係づくりそのものがケアの土台になります。例えば、本人が話したい日と話したくない日の波を受け止める、約束した時間や内容を守る、できていることに目を向けて言葉にする、といった積み重ねです。看護師が一人で抱え込まず、気になる変化はステーション内で共有し、主治医につなぐ姿勢も欠かせません。
担当するのに必要な要件 (令和8年度の通知)
訪問看護ステーションが医療保険で「精神科訪問看護基本療養費」を算定するには、担当する保健師・看護師・准看護師・作業療法士が、次のいずれかに当てはまる必要があります。あわせて、ステーションは地方厚生 (支) 局へ届出をします。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 精神科での勤務経験 | 精神科を標榜する保険医療機関で、精神病棟または精神科外来に1年以上勤務 |
| 精神科訪問看護の経験 | 精神疾患のある方への訪問看護の経験が1年以上 |
| 行政での経験 | 精神保健福祉センターや保健所などで、精神保健に関する業務を1年以上 |
| 研修の修了 | 国・都道府県・医療関係団体等が主催する、20時間以上で修了証が交付される精神科訪問看護の研修を修了 |
研修には、アセスメント、危機介入、薬物療法の援助、医療継続の支援、対人関係の援助、日常生活の援助、多職種連携、GAF尺度による評価方法の8つの内容が含まれます。つまり、精神科の勤務経験がなくても、研修を修了すれば要件を満たす道があります。
一般の訪問看護とのちがい
制度の上でも、いくつかちがいがあります (令和8年3月5日の通知、2026年6月1日から適用)。
- 指示書は、精神科を担当する主治医が交付する「精神科訪問看護指示書」
- 訪問は、原則として週3日まで (退院日から3か月以内は週5日まで)
- 時間区分は30分未満と30分以上。30分未満の訪問は、医師が必要と認め指示書に明記した場合に限る
- 毎月の最初の訪問時に、GAF尺度で判定した値を記録書・報告書に記載する
- 精神科訪問看護計画は、要件を満たす保健師・看護師などが作成する (准看護師を除く)
点数や細かな要件は改定ごとに見直されるので、実際に働くときはその年度の通知で確かめてください。
キャリアとして考えるときのポイント
精神科病棟の経験は大きな強み
精神科病棟や外来での経験が1年以上あれば、それだけで要件の一つを満たします。病棟で培った観察の目や、関係づくりの経験は、ご自宅でもそのまま生きます。
精神科が未経験でも道はある
精神科の経験がなくても、研修を修了すれば担当できます。まずは一般の訪問看護で在宅のケアに慣れ、そのあと研修を受けて精神科訪問看護に広げる、という順番も考えられます。一般の訪問看護でも、気分の落ち込みや不安を抱える利用者さん、介護に疲れたご家族と関わる場面はあり、そこでの経験は精神科訪問看護の土台になります。
職場選びで確かめたいこと
- 精神科訪問看護の届出をしているか、利用者さんのうちどのくらいを占めるか
- 研修の受講を支援する制度 (費用・勤務の扱い) があるか
- 初めての方への訪問を、複数人や同行で行う体制があるか
- 対応に迷ったとき、すぐに相談できる人がいるか
精神科を専門に深めるか、まずは幅広い利用者さんを看る訪問看護で在宅の基礎を固めるか。どちらにも意味があります。リンク訪問看護ステーション伊丹は、緩和ケアや小児、難病・医療処置、リハビリなどに対応しています。どんな方を訪問しているかは仕事内容のページにまとめていますので、キャリアを考える材料にしてください。
よくある質問
精神科の経験がないと、精神科訪問看護はできませんか?
経験がなくても、国・都道府県・医療関係団体等が主催する20時間以上の精神科訪問看護の研修を修了すれば、要件を満たします (令和8年度の届出に関する通知)。
准看護師も精神科訪問看護を担当できますか?
要件を満たす准看護師も担当できます。ただし、精神科訪問看護計画の作成は准看護師を除く保健師・看護師などが行うとされています。
精神科訪問看護の訪問回数に上限はありますか?
医療保険では、原則として週3日までです。退院日から3か月以内は週5日まで認められています (令和8年度の留意事項通知)。
一般の訪問看護ステーションでも精神科訪問看護をしていますか?
ステーションによります。精神科訪問看護を行うには事前の届出が必要なので、届出の有無や利用者さんの割合を、見学や面接で聞いてみてください。

