知るLearn在宅ケアの知識

医療的ケア児と訪問看護 ― 支援法と学校・相談支援との連携を知る
医療的ケア児とは、人工呼吸器や胃ろうなどを使い、たんの吸引や経管栄養といった医療的ケアが日常的に必要な子どものことです。こども家庭庁の資料では、在宅で暮らす医療的ケア児は全国で約2万人と推計されています。2021年に施行された医療的ケア児支援法は、保育・教育・相談の体制づくりを国や自治体に求めており、訪問看護はその暮らしを支えるチームの一員です。
医療的ケア児とは
「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(医療的ケア児支援法) は、医療的ケアを「人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為」と定めています。そして医療的ケア児を、日常生活と社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠な児童としています。18歳未満の子どもに加えて、18歳以上で高等学校などに在籍している人も含まれます。
こども家庭庁の資料 (令和7年2月の全国研修) は、医療的ケア児を、医学の進歩を背景として NICU などに長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使い、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童と説明しています。同じ資料では、全国の在宅の医療的ケア児 (0〜19歳) は約2万人と推計され、年齢別では0〜4歳が最も多いこと、人工呼吸器を必要とする子どもの数は直近10年間で約2.3倍に増えたことが示されています。
同じ資料によると、在宅で行われている医療的ケアは、経管栄養、吸引、吸入、気管切開部の管理、在宅酸素療法、人工呼吸器の管理、導尿、中心静脈栄養などさまざまです。子どもの状態も、寝たきりの子どもから、つかまり立ちや一人立ちができる子どもまで幅があります。
医療的ケア児支援法 (2021年) のポイント
医療的ケア児支援法は、令和3年 (2021年) 6月に成立し、同年9月18日に施行されました。目的には、医療的ケア児の健やかな成長とともに、その家族の離職の防止に役立つことがはっきり書かれています。
基本理念として、次のようなことが定められています。
- 医療的ケア児の日常生活・社会生活を、社会全体で支える
- 関係機関が連携し、一人ひとりの状況に応じて切れ目なく支援する
- 18歳になった後や高校などを卒業した後にも配慮する
- 本人と保護者の意思を最大限に尊重する
- 住んでいる地域にかかわらず、等しく支援を受けられるようにする
保育所や学校の設置者には、看護師等の配置などの措置が求められています。学校については、保護者が付き添わなくても適切な医療的ケアを受けられるようにすることが明記されました。また、都道府県が「医療的ケア児支援センター」を指定または自ら運営し、ご家族の相談や関係機関への情報提供・研修、連絡調整を行う仕組みもつくられました。
小児の訪問看護の特徴
介護保険の外にある支援
介護保険の被保険者は40歳以上の人なので、子どもの在宅生活は介護保険の外で支えられています。高齢者の訪問看護ではケアマネジャーが調整役になることが多いですが、子どもの場合は、障害福祉の相談支援専門員や、市町村や相談支援事業所などに所属する医療的ケア児等コーディネーターが、関係機関をつなぐ役割を担うことがあります。
成長とともにケアが変わる
子どもは成長します。体が大きくなればケアの方法が変わり、保育園や学校に通いはじめれば一日の過ごし方も変わります。発達を促す遊びや関わりも大切な要素です。
ご家族全体を支える
在宅でケアの多くを担うのはご家族です。夜間のケアで眠れない、仕事を続けられるか不安、きょうだいとの時間が取れない。法律の目的に「家族の離職の防止」が書かれているのも、こうした現実があるからです。訪問看護師は、ご家族の睡眠や暮らしにも目を向けます。
リンク訪問看護ステーション伊丹では、「小児看護・リハビリ」として、医療的ケアが必要なお子さまとご家族の暮らしを支えています。
学校・相談支援との連携
文部科学省の「令和5年度学校における医療的ケアに関する実態調査」(令和5年5月1日現在) では、特別支援学校に在籍する医療的ケア児は8,565人、幼稚園・小学校・中学校・高等学校に在籍する医療的ケア児は2,199人でした。
| 幼稚園・小・中・高に通う医療的ケア児 (2,199人) | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 学校生活で保護者等が医療的ケアのために付き添っている | 426人 | 19.4% |
| 登下校のみ保護者等が付き添っている | 1,019人 | 46.3% |
| 保護者等が付き添っていない | 754人 | 34.3% |
学校で医療的ケアを行う看護師は、学校の設置者が配置します。訪問看護師は家庭での様子をよく知る立場として、ご家族の同意のもとで、ケアの方法や体調の変化を学校や相談支援専門員と共有できます。入学や進級、退院の後など、環境が変わる時期は特に連携が大切です。
法律は、災害時の医療的ケア児への支援のあり方を検討することも政府に求めています。停電や避難のときにどうするかを、ご家族や関係機関と考えておくことも訪問看護の役割です。
兵庫県の医療的ケア児支援センター
兵庫県は、令和4年 (2022年) 6月15日に「兵庫県医療的ケア児支援センター」を開設しました。社会福祉法人養徳会の医療福祉センターきずな (加西市) の中に置かれ、医療的ケア児への支援実績のある相談支援専門員と看護師が相談に応じています。
県の公表資料によると、主な業務は次のとおりです。
- どこに相談すればよいか分からないご家族などからの相談をワンストップで受け止め、市町や事業者などと連携して対応する
- 情報の集約点として、関係機関との連絡調整の中核となる
- 調整が難しいケースや好事例、最新の施策などの情報を関係機関に提供する
- 全県域でアウトリーチによる家族交流会などを開く
相談は電話・FAX・メール・来所で受け付けており、受付時間や連絡先は兵庫県のページで確認できます。県の窓口を知っておくと、ご家族に情報を届けやすくなります。
よくある質問
小児看護の経験がなくても、医療的ケア児の訪問はできますか?
リンク訪問看護ステーション伊丹では、小児看護・リハビリにも対応しています。訪問看護が未経験の方には慣れるまで同行訪問でサポートし、十分に慣れてからひとりでの訪問を始めます。担当する利用者さんについては、面談や見学のときに気軽に聞いてみてください。
医療的ケア児の訪問看護に、介護保険は使えますか?
介護保険の被保険者は40歳以上の人なので、子どもの訪問看護は介護保険の対象にはなりません。高齢の利用者さんとは制度の枠組みが異なるため、ケアマネジャーではなく、相談支援専門員などと連絡を取り合いながら訪問することになります。
学校での医療的ケアも、訪問看護師が行うのですか?
医療的ケア児支援法は、学校の設置者に看護師等の配置などの措置を求めており、学校での医療的ケアは学校側の体制で行われます。訪問看護師は家庭での看護を担い、必要に応じて学校と情報を共有します。
医療的ケア児の訪問看護は、子どもの成長とご家族の暮らしを長く支える仕事です。関心がある方は、話を聞くだけのカジュアル面談で、どんな関わり方ができるか聞いてみてください。

