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武庫川
写真: Mass Ave 975 / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)

訪問看護の看取りと向き合う ― 在宅で最期を支える看護師の役割と心の支え

公開

在宅の看取りで訪問看護師が担う中心の役割は、ご本人がどう過ごしたいかを繰り返し確かめ、その思いをご家族や主治医、ケアマネジャーと共有しながら、最期まで暮らしを支えることです。国のガイドラインも、本人の意思決定を基本に、多職種のチームで話し合いを重ねることを原則にしています。看護師自身のつらさは、ひとりで抱えずチームで受け止める仕組みがあるかどうかで大きく変わります。

「家で最期を」と望む人は少なくない

厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」(令和4年度実施、報告書は令和5年12月) では、治る見込みがなく、およそ1年以内に死に至ると考えたときに最期を迎えたい場所として、一般国民の43.8%が「自宅」と答え、選択肢の中で最も多くなりました。看護師の回答では57.4%でした。

一方で、自宅以外を選んだ理由として最も多かったのは「介護してくれる家族等に負担がかかるから」でした。家で過ごしたい気持ちと、家族への遠慮。その間にある迷いに寄り添うことが、在宅の看取りに関わる看護師の大切な仕事です。

ご家族の負担は、訪問看護や訪問介護、福祉用具、短期入所などの組み合わせ方で変わります。「家で看るのは無理」と感じているご家族に、使える支えを一緒に整理して見せることも、看護師が担える役割のひとつです。

国のガイドラインが示す考え方

厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を平成30年3月に改訂しました。改訂の観点のひとつは、病院だけでなく介護施設や在宅の現場も想定したものにすることです。おもな考え方は次のとおりです。

  • 医療従事者から適切な情報提供と説明を行い、本人と医療・ケアチームが十分に話し合ったうえで、本人による意思決定を基本とする
  • 本人の意思は変化しうるので、話し合いは繰り返し行う
  • 本人が意思を伝えられなくなる場合に備え、家族等の信頼できる人も含めて話し合っておく
  • 話し合った内容は、その都度文書にまとめておく
  • 本人の意思が確認できないときは、家族等が推定する本人の意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする

解説編では、在宅や施設では担当の医師と看護師のほか、ケアマネジャーや介護福祉士などの介護従事者がチームに加わることも想定されています。訪問看護師は、このチームの中で、ご自宅に定期的に入る立場から、ご本人の小さな変化や本音に気づきやすい存在です。

人生会議 (ACP) と訪問看護師

「人生会議」は、ACP (アドバンス・ケア・プランニング) の愛称です。厚生労働省は、もしものときのために、望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組と説明しています。

同じ意識調査では、人生の最終段階の医療・ケアについて家族等や医療・介護従事者と話し合ったことがある人は、一般国民で29.9%にとどまりました。話し合いのきっかけは、病院の面談室だけでなく、日々の訪問の会話の中にもあります。

訪問の中でできること

  • ご本人の「こうしたい」「これは嫌だ」という言葉を、記録に残してチームで共有する
  • 体調の変化があったときに、今後の過ごし方をあらためて確かめる
  • ご家族が言葉にしにくい不安や疲れを聞き取り、ケアマネジャーや主治医につなぐ
  • 意思が変わることを当然のこととして受け止め、何度でも話し合える雰囲気をつくる

看取りの時期に看護師が担うこと

看取りが近づくと、訪問の目的は「治す」から「苦痛をやわらげ、その人らしく過ごす」へと重心が移ります。具体的な医療的ケアは主治医の指示のもとで行うもので、ここでは手順には触れませんが、看護師の役割はおおむね次のように整理できます。

  • 症状の観察と主治医への報告: 痛みや呼吸の苦しさなどの変化を伝え、方針を一緒に考える
  • ご家族への説明と支え: これから起こりうる変化や、連絡してよいタイミングを前もって伝える
  • 夜間・休日の連絡体制: 24時間連絡を受ける体制のあるステーションでは、不安な夜にも相談先がある
  • 亡くなったあとのケアとご家族への言葉かけ: お別れの時間を大切にし、ご家族の労をねぎらう

リンク訪問看護ステーション伊丹は、緩和ケアとして、自宅で最期を迎えたい方の思いを尊重し、ご家族も含めて支えることを掲げています。休日や夜間の体調の相談に応じる24時間の緊急対応も行っています。

看護師自身の気持ちとどう向き合うか

関わった方を見送ることは、経験を重ねても慣れるものではありません。「もっとできたことがあったのでは」と考えてしまうのは、真剣に関わった証拠でもあります。

チームで受け止める

ステーションによっては、看取りのあとにケースを振り返る場 (デスカンファレンスと呼ばれることもあります) を設けています。責める場ではなく、よかったことと次に生かしたいことを言葉にする場です。気持ちを話せる同僚や管理者がいることは、看取りに関わり続けるための大きな支えになります。

自分を守る工夫

  • 仕事の終わりに、その日のことを誰かに話す
  • 休日はしっかり仕事から離れる
  • つらさが続くときは、早めに管理者に相談する

まとめ

在宅の看取りは、ご本人の望みとご家族の思いの両方を大切にしながら、チームで支える仕事です。病棟とは違い、亡くなるまでの暮らしの時間に長く寄り添えるのが訪問看護ならではのやりがいです。看取りに関わることに不安がある方は、どんな体制で支えているのかをカジュアル面談で気軽に聞いてみてください。

よくある質問

訪問看護では、看取りに関わる機会は多いですか?

ステーションの利用者さんの状態や、緩和ケアへの取り組みによって大きく違います。見学や面接で、看取りの件数の目安や、関わり方を聞いてみるとよいでしょう。

看取りの経験がなくても大丈夫ですか?

看取りの経験が少ないまま訪問看護を始める方もいます。大切なのは、ひとりで判断せず、主治医や先輩、管理者と相談しながら進められる体制があることです。

人生会議 (ACP) では、看護師は何をするのですか?

ご本人の思いを聞き取って記録し、ご家族や主治医、ケアマネジャーと共有することです。国のガイドラインは、話し合いを繰り返し、その都度文書にまとめることを求めています。

看取りのあと、気持ちが落ち込んだらどうすればいいですか?

ひとりで抱え込まず、同僚や管理者に話してください。ケースを振り返る場を設けているステーションもあります。つらさが続くときは早めに相談することが大切です。

出典

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