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在宅での看取りとACP(人生会議) ― 訪問看護師の役割とご家族の支え
在宅での看取りを支える訪問看護師の仕事は、最期の数日間だけではありません。本人がどう過ごしたいかを、元気なうちから本人・ご家族・医療とケアのチームでくり返し話し合う「人生会議 (ACP)」に関わり、亡くなった後のご家族の悲しみにも寄り添います。この記事では、統計と国のガイドラインをもとに、在宅の看取りで訪問看護師が担う役割を整理します。
数字で見る「どこで亡くなるか」
厚生労働省の人口動態統計 (確定数) で、亡くなった場所の割合を見てみます。
| 年 | 病院 | 自宅 | 老人ホーム |
|---|---|---|---|
| 1951年 | 9.1% | 82.5% | 集計なし |
| 2019年 | 71.3% | 13.6% | 8.6% |
| 2022年 | 64.5% | 17.4% | 11.0% |
| 2025年 | 64.1% | 16.1% | 12.8% |
1951年には亡くなる方の8割以上が自宅でしたが、その後は病院が中心になりました。最近では病院の割合が下がり、自宅は2019年の13.6%から2022年には17.4%まで上がって、2025年は16.1%でした。老人ホームの割合は近年、年々増えています。なお、1994年までは老人ホームでの死亡は「自宅」または「その他」に含まれています。
数字の動きにはいろいろな背景がありますが、病院以外の場所で最期を迎える方が一定数いて、それを支える在宅医療と訪問看護が欠かせないことは確かです。
人生会議 (ACP) とは
厚生労働省は、人生会議を「もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組」と説明しています。ACP (アドバンス・ケア・プランニング) の愛称として、厚生労働省が普及に取り組んでいる言葉です。
ただ、まだ広く知られているとは言えません。厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」(令和4年度) では、人生会議を「よく知っている」と答えた一般の方は5.9%、「知らない」は72.1%でした。看護師で「よく知っている」と答えたのは45.8%です。訪問看護師が日々の関わりの中で話題にすることには、大きな意味があります。
ガイドラインが示す考え方
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂) は、次のような考え方を示しています。
- 医療従事者からの適切な情報提供と説明のうえで、本人による意思決定を基本とし、多専門職種からなる医療・ケアチームとして方針を決める
- 本人の意思は変化しうるので、話し合いをくり返すことが重要
- 本人が意思を伝えられなくなる場合に備えて、家族等の信頼できる人も含めて話し合っておく。本人の意思を推定する人を前もって決めておくことも重要
- 話し合った内容は、その都度文書にまとめておく
- 本人の意思が確認できない場合は、家族等が推定する本人の意思を尊重し、推定できないときは家族等と十分に話し合って、本人にとって最善の方針をとる
解説編によると、平成30年の改訂は、在宅や施設での療養や看取りの需要が増えていることを背景に、ACP の考え方を盛り込み、病院だけでなく介護施設・在宅の現場も想定して行われました。在宅や施設では、担当の医師と看護師のほか、ケアマネジャーや介護福祉士などがチームに加わることも想定されています。また「家族等」には、法的な親族だけでなく、親しい友人など本人が信頼を寄せる人も含まれるとされています。
訪問看護師の役割
ふだんの会話の中で思いを聴く
訪問看護は、自宅という本人の場所で、くり返し会う仕事です。「家の庭が好き」「孫の行事までは家にいたい」といった言葉は、改まった面談より、ケアをしながらの会話の中で出てくることが多いものです。こうした言葉を記録に残し、チームと共有します。
節目で話し合いを持ちかける
入退院、病状の変化、介護する人の状況の変化。ガイドラインが言うように、本人の思いは変わりうるので、節目ごとに「今はどう考えていますか」と確かめ直します。
最期が近づいたとき
主治医の指示のもとで症状をやわらげるケアを行い、これから起きうる身体の変化をご家族に前もって伝えます。夜間や休日にどこへ連絡すればよいかをはっきりさせておくことも、ご家族の安心につながります。夜間の連絡を受ける仕組みは訪問看護のオンコールの実際で紹介しています。
リンク訪問看護ステーション伊丹では、緩和ケアとして、自宅で最期を迎えたい方の思いを尊重し、ご家族も含めて支えることを大切にしています。
ご家族のグリーフケア
大切な人を亡くしたときに生じる反応を「グリーフ (悲嘆)」といいます。神奈川県の解説では、その表れ方は一人ひとり異なり、悲しみや罪悪感、不安といった気持ちの反応だけでなく、睡眠障害や食欲不振など身体にも影響が出ることがあるとされています。こうした人に寄り添い援助することを「グリーフケア」と呼んでいます。
在宅で看取ったご家族は、介護をやりきった思いと同時に、「あのときこうすればよかった」という後悔を抱えることもあります。訪問看護師は、介護の日々を一緒に振り返り、そのがんばりを言葉にして伝えられる立場です。必要に応じて、相談できる窓口を紹介することも支えの一つです。
よくある質問
看取りの経験がなくても、在宅で働けますか?
はい。リンク訪問看護ステーション伊丹では、訪問看護が未経験の方には慣れるまで同行訪問でサポートし、十分に慣れてからひとりでの訪問を始めます。看取りはひとりで抱えるものではなく、主治医やチームと相談しながら支えます。
人生会議は、誰が始めるものですか?
本人が考え、信頼する人と話し合うのが出発点ですが、きっかけをつくるのは医療やケアの担い手でもかまいません。ガイドラインでも、本人が意思を示し伝えられるよう、医療・ケアチームが支援することが求められています。
本人とご家族の希望が違うときは?
ガイドラインは本人による意思決定を基本としています。そのうえで、家族等の中で意見がまとまらない場合や合意が得られない場合には、複数の専門家からなる話し合いの場を別に設けて検討することも示されています。看護師はそれぞれの思いを丁寧に聞き、主治医やケアマネジャーと共有します。
一度決めた希望は変えられないのですか?
変えてかまいません。ガイドラインは、本人の意思は変化しうるものであり、話し合いをくり返すことが重要だとしています。話し合った内容はその都度文書にまとめ、新しい思いが出てきたらまた話し合います。
在宅の看取りは、本人の思いを長い時間をかけて受け止め、ご家族と一緒に支えていく看護です。どんな思いで訪問しているのか、話を聞くだけのカジュアル面談で気軽にたずねてみてください。


