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訪問看護の記録とICT ― 計画書・報告書のちがいとタブレット記録
訪問看護の記録は、主治医の「訪問看護指示書」を起点に、看護師がつくる「訪問看護計画書」、毎回の訪問を残す記録、主治医へ送る「訪問看護報告書」の組み合わせでできています。いずれも運営基準で作成や保存が定められた書類で、完結の日から2年間の保存が必要です。タブレットで記録するステーションもありますが、その場合は厚生労働省のガイドラインに沿った端末の扱いが求められます。
病棟の記録と、どこが違うのか
病棟では、同じ電子カルテを医師・看護師・薬剤師などが同時に見て書き込むのがふつうです。訪問看護では、主治医は別の医療機関にいて、ケアマネジャーや訪問介護も別の事業所にいます。そのため記録には、自分たちのケアを残す役割に加えて、離れた職種に状態を伝える手紙の役割があります。
もうひとつの違いは、書く場所と時間です。訪問先から次の訪問先へ移動する合間や、事務所に戻ってから記録をまとめるため、1日の段取りの中に記録の時間をどう組み込むかが大切になります。
運営基準が定める書類
訪問看護には、介護保険と医療保険の両方に運営基準 (事業の人員や運営のルールを定めた省令) があります。記録に関する主な決まりを整理すると次のとおりです。
| 書類 | 誰がつくるか | 主な内容と扱い |
|---|---|---|
| 訪問看護指示書 | 主治医 | 訪問看護の開始時に文書で受ける |
| 訪問看護計画書 | 看護師等 (准看護師を除く) | 療養上の目標と具体的なケアの内容。利用者さんに説明する |
| 訪問のつど残す記録 | 訪問した看護師等 | 提供したケアの具体的な内容など |
| 訪問看護報告書 | 看護師等 (准看護師を除く) | 訪問日と提供した看護の内容。主治医に提出する |
訪問看護計画書
計画書は、利用者さんの希望、主治医の指示、心身の状況などをふまえて、療養上の目標と、目標に向けた具体的なケアの内容を書くものです。介護保険の基準では、すでにケアマネジャーの居宅サービス計画 (ケアプラン) がある場合はその内容に沿ってつくること、主要な事項を利用者さんやご家族に説明して同意を得ること、作成した計画書を利用者さんに交付することも定められています。
毎回の記録と報告書
医療保険の基準では、整備・保存する記録として「訪問看護記録書」が挙げられています。介護保険の基準でも、提供した具体的なサービスの内容などを記録することが求められます。訪問日と提供した看護の内容は「訪問看護報告書」にまとめ、計画書とあわせて主治医に提出します。計画書と報告書の作成については、管理者が必要な指導と管理を行うことになっています。
2年間の保存
医療保険・介護保険のどちらの基準でも、指示書・計画書・報告書・提供の記録などは、その完結の日から2年間保存するよう定められています。医療保険の基準には、記録を正確かつ最新の内容に保つよう整備することも書かれています。
タブレットやクラウドで記録するとき
介護保険の基準は、書面で行うことが定められている作成・保存を、電磁的記録で行うことを認めています。訪問先でタブレットに入力し、事務所のパソコンと共有するやり方は、この枠組みの中にあります。
厚生労働省のガイドライン
医療情報を扱うシステムには、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」があります。2026年9月時点の最新は第7.0版 (令和8年6月) で、対象となる「医療機関等」には訪問看護ステーションも含まれています。電子保存では、情報の真正性・見読性・保存性を確保することが前提です。
端末を外に持ち出すときのルール
同ガイドラインのシステム運用編は、情報機器を外に持ち出す場合について、たとえば次のような対策を挙げています。
- 端末の起動パスワードの設定は必須
- 医療情報を保存する場合は暗号化し、アプリの起動にもパスワードを設定する
- 業務に不要なアプリは入れない。端末の管理者権限は原則として付与しない
- 公衆無線LANを使ったあとに、端末の安全性を確かめる手順を決めておく
- 紛失・盗難が起きたときの対応手順をあらかじめ作っておく
- 事業所が許可したサービス以外に医療情報を保存しない
看護師として日々守ることは、「端末を車内や訪問先に置き忘れない」「私物のアプリやクラウドに写真や記録を入れない」「事業所が認めていないWi-Fiや機器につながない」といった基本の積み重ねです。具体的なルールは事業所の運用管理規程で決まるので、入職時に確認しましょう。
記録を負担にしないコツ
- 訪問中に短くメモし、その日のうちに清書する: 記憶が新しいうちに書くほど、短い時間で正確に書けます
- 「誰に伝えるか」を意識する: 主治医には病状の変化、ケアマネジャーには生活の変化と、相手によって知りたいことが違います
- 定型文に頼りすぎない: 毎回同じ文は、変化を見落とす原因になります
- 迷った表現は先輩に見てもらう: 報告書の書き方は、ステーションの中で揃えていくものです
面接・見学で聞いておきたいこと
- 記録は訪問先で入力しますか、事務所に戻ってからですか
- 記録の時間は、勤務時間の中に組み込まれていますか
- 端末の持ち帰りや、紛失時のルールは決まっていますか
- 計画書や報告書は、最初は誰と一緒につくりますか
まとめ
訪問看護の記録は、ケアの証拠であると同時に、離れて働く主治医やケアマネジャーとつながるための手段です。書類の種類と役割を押さえておけば、病棟から移っても戸惑いは小さくなります。リンク訪問看護ステーション伊丹では業務用タブレットを貸与し、具体的な記録方法やツールは入職後に説明・フォローしています。記録の時間を含めた1日の流れは仕事内容のページでご覧いただけます。
よくある質問
訪問看護の記録は、紙ですか、電子ですか?
どちらもあります。介護保険の運営基準は書類の作成・保存を電磁的記録で行うことを認めており、タブレットで記録するステーションもあります。入職前に、使っている方法を確認しておくと安心です。
訪問看護計画書は、新人でもつくりますか?
運営基準では、計画書と報告書は看護師等 (准看護師を除く) がつくり、管理者が必要な指導と管理を行うとされています。最初は先輩や管理者と一緒につくれるか、入職前に確かめておくと安心です。
記録はどのくらいの期間、保存しますか?
医療保険・介護保険どちらの運営基準でも、完結の日から2年間の保存が定められています。
記録用のタブレットは自宅に持ち帰れますか?
ステーションの規程によります。持ち出す場合は、起動パスワードの設定や暗号化、紛失時の対応手順など、厚生労働省のガイドラインに沿った管理が必要です。
出典
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 (e-Gov法令検索) ― 第69条・第70条・第73条の2・第217条
- 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 (e-Gov法令検索) ― 第16条・第17条・第30条
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版 (厚生労働省)
- 同ガイドライン 第7.0版 概説編 (厚生労働省、PDF) ― 医療機関等の範囲
- 同ガイドライン 第7.0版 システム運用編 (厚生労働省、PDF) ― 外部へ持ち出す医療情報の管理対策


