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いろいろな聴診器 (イメージ)
写真: melvil / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)

在宅酸素療法(HOT)の訪問看護 ― 観察・火気の注意・連携の視点

公開

在宅酸素療法 (HOT) の利用者さんを訪問するとき、訪問看護師が見ているのは酸素の数値だけではありません。息切れが暮らしのどの場面で起きているか、火の扱いは安全か、機器の事業者や主治医と情報がつながっているか。流量などの設定を決めるのは主治医で、看護師は「指示どおりに、安全に続けられているか」を暮らしの中で確かめる役割を担います。

在宅酸素療法とは

厚生労働省の資料では、在宅酸素療法は、慢性呼吸不全の患者さんが酸素濃縮装置、液化酸素、酸素ボンベを使って自宅で高濃度の酸素を吸入する治療法と説明されています。病棟では壁の配管から酸素を使うのが当たり前ですが、在宅では装置そのものが居間や寝室に置かれ、チューブが家の中を通ります。この「生活の場に医療機器がある」状態が、観察のポイントを大きく変えます。

訪問で観察すること

からだの様子

  • 息切れの程度と、どんな動作で強くなるか (会話、歩行、トイレ、入浴など)
  • 呼吸数、脈拍、パルスオキシメーターの値、唇や爪の色
  • むくみ、体重の変化、痰の量や色、発熱
  • 食欲や睡眠、表情や話し方

数値の読み方や対応の基準は、利用者さんごとに主治医の指示で決まっています。看護師は指示書の内容と照らし合わせて、変化があれば主治医に報告します。

使い方と機器のまわり

  • 指示された場面 (安静時、動くとき、睡眠時など) で使えているか
  • 鼻カニューラのずれや、耳・鼻のまわりの皮膚の傷
  • チューブの折れや踏みつけ、足を引っかけやすい長さになっていないか
  • 外出用のボンベの残りや、予備の置き場所

「酸素を吸うと楽になるけれど、外では使いたくない」という気持ちを話される方もいます。使い方の確認は、責めるためではなく、困りごとを聞くための入り口です。

火気の注意 ― いちばん大事な安全の話

酸素は燃焼を助ける性質が強いガスです。厚生労働省は、在宅酸素療法を受けている人やご家族に向けて、次の点に注意するよう呼びかけています。

  1. 高濃度の酸素を吸入中に、たばこなどの火気を近づけると、チューブや衣服などに引火し、重い火傷や住宅火災の原因になる
  2. 酸素濃縮装置などの使用中は、装置の周囲2m以内に火気を置かない。特に酸素吸入中は、たばこを絶対に吸わない
  3. 火気の取扱いに注意し、取扱説明書どおりに正しく使えば、酸素が原因で火災になることはないので、過度に恐れず、医師の指示どおりに吸入する

それでも事故は続いています。厚生労働省のページに掲載されている日本産業・医療ガス協会のまとめでは、平成15年から令和7年5月までに、在宅酸素療法を行っている患者さんの住まいで起きた火災による死亡が97件、重症が12件とされ、その後も令和8年3月までの事例が追加されています。

2017年の厚生労働省の安全性情報では、平成28年11月末時点の全61件を原因別に分けると喫煙が43%で最も多く、ほかにストーブ、線香、台所、ろうそくなども含まれていました。同じ資料には、酸素供給装置が直接の火災原因となったことはないとも書かれています。

訪問で確かめたいのは、本人だけでなく同居のご家族の喫煙、ガスコンロでの調理、仏壇のろうそくや線香、暖房器具の位置です。厚生労働省のリーフレットは、本人はもちろん周りの人も酸素吸入中は絶対にたばこを吸わないよう呼びかけています。頭ごなしに禁止するより、なぜ危ないのかを一緒に確かめ、主治医やケアマネジャーとも情報を共有します。

機器の事業者・主治医との連携

酸素濃縮装置やボンベの設置・点検は、機器を扱う事業者が担います。厚生労働省は平成22年の通知で、日本産業・医療ガス協会に対し、装置の設置や点検で居宅を訪問する際に、販売店なども火気の注意を呼びかけるよう求めています。

訪問看護師は、機器の事業者よりも頻繁にご自宅に入る立場です。チューブの傷みや装置の異音に気づいたら、ご家族と一緒に事業者へ連絡します。停電や災害のときにどうするか、連絡先はどこかを、ご家族・事業者・ケアマネジャーとあらかじめ確認しておくことも大切です。

設定を変えるかどうかは主治医が判断します。看護師は、どの場面で息切れが強いか、数値がどう動いたかを具体的に報告し、判断の材料を届けます。

息切れと暮らし

在宅酸素療法の方にとって、息切れは「症状」であると同時に「暮らしの制約」です。入浴、トイレ、着替え、食事など、ふだんの動作の一つひとつで息が上がります。

  • 動作を区切って休む、座って行うなど、やり方を一緒に工夫する
  • よく使う物の置き場所や、動線を見直す
  • 息苦しさへの不安がさらに呼吸を苦しくすることもあるので、気持ちの面も聞く

リンク訪問看護ステーション伊丹では、専門資格を持つセラピストと連携した心臓・呼吸リハビリにも取り組んでいます。看護師とリハビリ職が同じ利用者さんを見ることで、体調の変化と動作の工夫を両方から支えられます。

よくある質問

病棟で酸素療法を見てきました。在宅で特にちがうところは?

装置とチューブが生活空間にあること、そして看護師がいない時間のほうが長いことです。火気や転倒など、病室では起きにくい危険を、暮らしの様子から見つけるのが在宅の観察です。

利用者さんに「酸素の量を変えてほしい」と言われたら?

看護師の判断で設定を変えることはしません。息苦しさの様子を確かめ、主治医に連絡して指示を受けます。夜間や休日の相談は、オンコールで受けることもあります。仕組みは訪問看護のオンコールの実際で紹介しています。

たばこをやめられない方には、どう関わりますか?

危険を具体的に説明し、本人とご家族の両方に伝えます。厚生労働省のリーフレットのような公的な資料を一緒に見るのも一つの方法です。主治医やケアマネジャーとも状況を共有し、チームで関わります。

在宅酸素療法の経験がなくても大丈夫ですか?

機器のしくみや注意点は、利用者さんごとの機器の取扱説明書や主治医の指示で確かめながら覚えていけます。リンク訪問看護ステーション伊丹では、訪問看護が未経験の方には慣れるまで同行訪問でサポートしています。

在宅酸素療法の訪問は、呼吸のアセスメントに加えて、住まいの安全や暮らしの工夫まで考えるところに在宅看護らしさがあります。実際にどんな利用者さんを訪問しているのか、話を聞くだけのカジュアル面談で気軽に聞いてみてください。

出典

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