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医療保険と介護保険の訪問看護のちがい ― どちらが優先されるか
訪問看護は、医療保険と介護保険のどちらかで行います。要介護・要支援の認定を受けている利用者さんは原則として介護保険が優先され、厚生労働大臣が定める疾病等の方、特別訪問看護指示書が出ている期間、精神科訪問看護 (認知症を除く) などのときに医療保険になります。どちらの保険かで、訪問できる回数、1回の時間、計画の立て方、自己負担の上限の考え方が変わります。
原則は「介護保険が優先」
健康保険法第55条第3項は、同じ病気やけがについて介護保険で相当する給付を受けられる場合、医療保険の給付 (訪問看護療養費を含む) は行わないと定めています。医療保険の訪問看護の料金を定めた告示でも、介護保険の要介護被保険者等については、別に定める場合を除いて算定しないとされています。
つまり、同じ利用者さんに同じ訪問看護をするとき、要介護認定があれば、まず介護保険で考えるのが基本です。介護保険の訪問看護はケアマネジャーが作るケアプラン (居宅サービス計画) に位置づけて行い、訪問看護計画書もそのケアプランに沿って作ります。
要介護認定があっても医療保険になる場合
医療保険と介護保険の給付調整についての厚生労働省の通知では、要介護被保険者等でも、次のような場合は医療保険の訪問看護療養費を算定できるとされています。
- 厚生労働大臣が定める疾病等の利用者: 末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病関連疾患 (条件つき)、人工呼吸器を使用している状態など。いわゆる別表第7です。一覧は別表第7と別表第8の記事にまとめています。
- 特別訪問看護指示書が出ている期間: 急性増悪などで主治医が一時的に頻回の訪問が必要と判断したときです。くわしくは指示書の記事で説明しています。
- 精神科訪問看護: 精神科訪問看護基本療養費を算定する訪問で、認知症でない利用者さんの場合です。
このほか、入院中 (外泊日を含む) に退院に向けて行う訪問看護も医療保険で算定できます。別表第8 (特別な管理を要する状態) に当たるだけでは医療保険には切り替わらない点は、まちがえやすいところです。
回数と時間のちがい
| 医療保険 | 介護保険 | |
|---|---|---|
| 回数の考え方 | 原則週3日まで。別表第7・第8の方、特別訪問看護指示の期間は週4日以上も可 | ケアプランに位置づけた回数。要介護度ごとの区分支給限度基準額の範囲内 |
| 1回の時間 | 30分から1時間30分程度を標準とする | 20分未満、30分未満、30分以上1時間未満、1時間以上1時間30分未満の区分 |
| 利用するステーション | 原則1か所。別表第7・第8の方などは2か所、週7日の訪問が計画されている場合は3か所まで | ケアプランで調整 |
医療保険には、90分を超える訪問に対する長時間訪問看護加算や、1日に2回以上訪問したときの難病等複数回訪問加算もありますが、どちらも対象となる利用者さんが決まっています。
介護保険の時間区分は、訪問看護ステーションの看護師が30分以上1時間未満で訪問すると823単位、というように単位で決まっています (2024年度 (令和6年度) 介護報酬改定で定められた単位数で、2026年6月の改定後も同じです)。単位数は今後の改定で変わることがあります。
自己負担の考え方
医療保険の自己負担は年齢と所得で決まり、70歳未満は3割 (小学校入学前は2割)、70〜74歳は2割 (現役並み所得者は3割)、75歳以上は1割 (一定以上の所得のある方は2割、現役並み所得者は3割) です。月ごとの負担が重くなりすぎないよう、高額療養費の制度もあります。
介護保険の自己負担は1割 (一定以上の所得のある方は2割または3割) です。ただし、区分支給限度基準額を超えてサービスを使うと、超えた分は全額自己負担になります。訪問看護の回数を増やすと、ほかの介護サービスに使える枠が減ることもあります。この点は区分支給限度基準額の記事でくわしく扱っています。
同じ月に両方の保険が関わるとき
特別訪問看護指示の期間だけ医療保険になるなど、同じ月に両方の保険が関わることがあります。このとき、介護保険で緊急時訪問看護加算を算定している月は医療保険の24時間対応体制加算を算定しない、といった重複を避けるルールがあります。加算の名前と仕組みのちがいは訪問看護の加算の記事を見てください。
看護師として押さえておきたいこと
病棟では保険の種類を意識する場面は多くありませんが、訪問看護では「どちらの保険か」で訪問の組み立てそのものが変わります。新しい利用者さんを受けるときは、要介護認定の有無と要介護度、主たる傷病名、指示書の種類と期間をまず確かめます。病名や状態が変わると保険が切り替わることもあるので、指示書が更新されるたびに見直すのが基本です。
よくある質問
要介護認定を受けている人は、医療保険の訪問看護をまったく使えないのですか?
使える場合があります。厚生労働大臣が定める疾病等 (別表第7) に当たる方、特別訪問看護指示書が出ている期間、認知症以外の精神科訪問看護などは、要介護認定があっても医療保険で訪問します。
末期のがんの方は、どちらの保険になりますか?
末期の悪性腫瘍は別表第7に含まれるため、要介護認定があっても医療保険の訪問看護になります。週4日以上の訪問や1日に複数回の訪問も、要件に沿って行えます。
保険の判断は看護師がするのですか?
制度で決まるもので、看護師が自由に選ぶものではありません。ただ、病名や状態、指示書の内容を確かめて、管理者や事務担当、ケアマネジャーと正しく共有するのは訪問看護師の大事な役割です。
若い人の訪問看護はどちらの保険ですか?
要介護認定を受けていない方は医療保険です。介護保険の被保険者は40歳以上の方 (65歳以上の第1号被保険者と、40〜64歳の医療保険加入者である第2号被保険者) なので、小児の訪問看護は医療保険で行います。
まとめ
訪問看護では、介護保険が優先という原則と、医療保険になる例外の両方を知っておくと、訪問の回数や時間がなぜそう決まっているのかが見えてきます。制度の話は、入職後に先輩と一緒に実際の利用者さんで確かめていくと身につきます。働き方や受け入れ体制をくわしく知りたい方は、話を聞くだけのカジュアル面談からお気軽にどうぞ。
出典
- 健康保険法 (e-Gov法令検索)
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件 令和8年厚生労働省告示第74号 (厚生労働省)
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 令和8年3月5日 (厚生労働省)
- 「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について 令和8年3月27日 (厚生労働省)
- 介護報酬の算定構造 令和8年6月改定箇所 (厚生労働省)
- 介護保険法 (e-Gov法令検索)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 (e-Gov法令検索)
- 医療費の一部負担 (自己負担) 割合について (厚生労働省)
- 介護保険最新情報 Vol.947 区分支給限度基準額に係る給付管理の取扱いについて 令和3年3月22日 (厚生労働省)
- 介護保険制度の概要 令和7年7月 (厚生労働省老健局)

